デイリーレポート
ビバップなお馴染み曲がしっかり演奏され嬉しく聴いたこれからが楽しみなピアノ
11/19(水)は《杉林茜トリオ》杉林茜(pf) Sou Chihan(ソウ・チハン)(b) 山口友郎(ds) さん
▶昨夜は、今春洗足大学を卒業しプロの道を歩み始めたピアニスト茜さんのリーダーライブで、リズム隊は台湾出身のソウ・チハン(b)さんと山口友郎(ds) さん。演奏曲は、ビバップのスタンダード曲をきちんと演奏され、私の好みが似ていて嬉しくなり伺うと、片倉真由子さんに師事しているとのことで、やっぱりと納得しました。昨夜の出演のことを話すと 「しっかり頑張ってきなさい」 と励まされたそうです。
▶最近の若い方はオリジナルを演奏したがるのですが…私はスタンダードをしっかり演奏出来るようになってから、と思っています。お客さまも自分の知っている曲が、どんな風に演奏されるのか聴きたくていらっしゃる方もいて、それがライブジャズの良さの一端なのですが、勉強会のようなオリジナル曲ばかりだと、最初のステージが終わると帰られる方もおられます。
▶今のこの大不況の時だからこそ、楽しい音楽を聴いて気持ちよくなってお帰りいただきたいのです。もちろん、オリジナル曲の演奏を否定する訳ではありませんが。昨夜はジャズ黄金時代によく聴いた、例えばモンクの 「Ruby, My Dear」 などビバップの名曲ばかり。茜さんもお好きなようで、私と好みが合っていて大いに楽しませていただきました。
▶1st.set…
古い映画 「A Damsel in Distress」 より名スタンダード曲G.ガーシュイン♪A Foggy Day/アルト奏者 故土岐英史の♪C Minor…茜さんが初めて聴いた時シビレまくって私もこんな風に弾きたいと思ったと/テナー奏者ベニー・ゴルソンの代表曲♪Along Came Betty/ミュージカル「The Smell of the Crowd (観客はババラの匂い)より哀愁のあるバラード♪♪Who Can I Turn To/T.モンクの♪Shuffle Boil。
▶2nd.set…
B.パウエルの人気曲♪Cleopatra’s Dream (クレオパトラの夢)/杉林茜作大学4年の時に作った♪To Barry with Love…4年間置い続け憧れたビバップのピアニスト バリー・ハリスに捧げた曲/テナー奏者ジョー・ヘンダーソンのバラード♪Serenity (静寂)/T.モンクのバラード♪Ruby, My Dear…名盤LP 「ソロ・モンク」 収録の私も好きな曲/D.ガレスピー♪Woody’n You/アンコール曲はM.デイビス作(とされている)軽快な曲♪Four でした。
◉ステージの流れと様子はいつものように倉田さんにお願いしました。
【倉田レポート】
9月21日の初出演に続いて二度目の登場杉林茜さんのリーダーライブ。杉林さんのオリジナル一曲を除いて、スタンダード曲を中心に演奏されました。
▶1st.set…杉林さん ソウさん山口さんがステージに登場し一曲目♪A Foggy Day の演奏が始まります。杉林さんの力強いタッチのピアノにソウさんの穏やかなベース山口さんの爽快なドラムスのサウンドが続きます。杉林さんのピアノソロになると、鍵盤に視線を落としくっきりとした音で弾いていきます。杉林さんが弾くピアノの一音一音は生き生きとしてパワフルな響きです。速度を増し力感溢れる演奏になっていくと、山口さんのドラムス、ソウさんのベースも呼応して華やかな演奏になりました。山口さんはドラムセットをピアノとベースの方に向け、杉林さんやソウさんと視線を合わせるようにして演奏しています。
▶ソウさんは響きの良い明るい音で緩急豊かにベースソロを弾き、歌うように演奏を進めます。山口さんは杉林さんのピアノの合いの手でシャープにドラムソロを叩いていきます。左手はスティックを逆手に持ってまろやかな音で叩いたりリムショットも加えて多彩なサウンドを響かせます。トリオで疾走していく演奏は、一曲目から疾走感に溢れ高い熱量を放ちます。
▶杉林さんがご挨拶とメンバー紹介をされ、大好きなジャズスタンダードを中心に演奏します、と話します。二曲目は、日本を代表するサックス奏者の土岐英史さんの名曲♪C Minorを演奏されました。
▶ピアニストの方がこの曲をご自身のリーダーライブで演奏されるのは珍しいと感じます。またセットリストを見ると、前回とは全曲が異なっていて、杉林さんがこの日のために時間をかけてご準備をされたことが窺えます。
▶♪C Minor は、ゆったりと演奏が進み、杉林さんはくっきりとした音色でピアノを弾き、その響きには奥行きが感じられました。
▶♪Who Can I Turn To は、杉林さんがジャズを始めたときから大好きなビル・エヴァンスがよく演奏していた曲で、この曲を美しく演奏することが目標の一つ、と話します。冒頭でソウさんがベースだけの演奏を披露されました。杉林さんは軽やかに、少し憂いを帯びた綺麗な音を転がすように弾いていきます。
▶杉林さんはセロニアス・モンクが大好きだそうで、この日は各セットで一曲ずつ♪Shuffle Boil、♪Ruby My Dear を演奏されました。前回はモンクが眠っているときのイメージをモチーフとし、モンクに向けて書いたというオリジナル曲♪Sleeping Monk を演奏されていました。
▶2nd.set…では益々熱い演奏が展開します。♪Cleopatra’s Dream では、杉林さんが静かな一音からゆったりと弾き、速度を上げて高速道路を運転していくようなスリリングさで弾き進みます。観客は皆、杉林さんの方に目を向け力感豊かな演奏を聴いています。ピアノソロでそのまま最後まで走り抜けます。
▶この日、一曲だけ演奏された杉林さんのオリジナル曲♪To Barry With Love は、昨年大学4年生の時に卒業制作として作曲したものだそうで、バリー・ハリスに向けて書いた曲とのことでした。杉林さんのピアノソロでは、明るく楽しい曲調で軽やかな音を響かせ弾いていきます。高い音の残響が可憐で楽しい雰囲気を作ります。山口さんがマーチのようにブラシでドラムを叩き、ソウさんは穏やかな音でベースを弾いていきます。
▶♪Ruby My Dear では、杉林さんが聴き手の心の琴線に触れるような綺麗なフレーズを弾き、ソウさんが滑らかな音で受け止め柔らかく低い音で弾き進みます。穏やかに歌うようなベースソロを披露されました。
▶♪Woddy ‘n’ You では、山口さんがブラシでドラムをリズミカルに叩き、ソウさんもベースで軽快にリズムを刻み、その中を杉林さんが弾き進みます。星空のように綺麗なフレーズを弾き、その勢いを引き継いで速弾きを見せるベース、軽快に叩き始め豪快なサウンドを放つドラムスの各ソロからアンサンブルで演奏を結びました。
▶アンコールでは、♪Four を遊び心満載で楽しく演奏し、この日のライブが終演となりました。魅力的なスタンダード曲の数々、とても心地良い杉林さんのオリジナル曲を、パワフルで息の合った演奏で楽しませていただきました。次回もとても楽しみです!!

















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